シンガポールの給与水準の話
今回はみんなが大好きなお金とお給料のお話。
お客様が日本から来社された際に、シンガポールの基本情報についてもプレゼンすることが多いのだが、その中で特にお客様の食いつきが良いのがシンガポールの「教育システム」と「人件費・給与水準」の話だ。
給与水準に関しては、ざっくりと理解して頂くために今までは「シンガポールの一般的な給与水準は日本よりやや低い程度です」と説明していた。
シンガポールの給与水準が日本よりも低いというのは、漠然と「シンガポール=リッチな国」と思っている日本人には意外に感じられるようだ。
だが、最近の統計データを見る限り、その説明もそろそろ改める必要ありそうだと感じている。今回はそんなシンガポールの年収や給与水準に関する備忘録。
日本とシンガポールの年収比較
今回、日本とシンガポールの年収を比較するにあたっては、両国政府の統計データから引用した。統計方法に差異はあるが、おおよその目安にはなると思う。
まずは、MOM「Labour Market Statistical Information」より、フルタイムで働くシンガポール人の年収中央値を1SGD=82円換算で日本円ベースで算出した。
シンガポールにおけるこの手の統計は、富裕層が平均値を押し上げているケースが多いので、より実態に近いと思われる中央値から数値を得た。
日本人の平均年収については、国税庁の「平成28年分民間給与実態統計調査」より数値を引用した。
この2つのデータを日本円ベースで比較したグラフが下記になる。
記事執筆時点で日本側の数値は2016年までしかないのだが、日本人の年収が伸び悩んでいる間にシンガポール人との差がどんどん縮まり続けていることが読み取れる。結果的に日本の年収は422万円(2016年)、シンガポールは416万円(2017年)となっており格差はほとんどなくなっている。
このペースで行けば2018年か2019年には、一般的なシンガポールの年収が日本の水準を追い抜くと思われる。
シンガポールでは賃金水準の上昇が継続する中、近年でも年3%程度の昇給が実施されている。今後は「シンガポールの一般的な給与水準は日本と同程度です」と説明を改める必要がありそうだ。
日本とシンガポールの世帯収入比較
次は日本とシンガポールの世帯収入を比較してみよう。
シンガポール側のデータはDOSの「Key Household Income Trends, 2017」から世帯収入中央値を1SGD=82円計算で算出した。
日本の平均世帯収入は厚生労働省「平成28年国民生活基礎調査」より引用した。
この2つのデータを日本円ベースで比較したグラフが下記になる。
個人の年収としては日本とシンガポールにほとんど差異はないが、世帯収入を基準とすると話は一変する。日本の世帯収入が546万円に対して、シンガポールでは888万円となっており、日本の1.6倍となっている。
これはシンガポールでは共働きの割合が日本よりも高いこと、また男女間の賃金格差が日本より小さいことによる。
最後に
シンガポールと日本の給与水準の差はなくなりつつあり、世帯収入についてはシンガポールが日本を大きく上回っている。経済規模や成長の維持を図る中で人口の少ないシンガポールは女性の社会進出に力を入れてきた。メイド(ヘルパー)政策の促進などの成果、そしてアベノミクス移行の円安が今回の数字に表れているように思う。
以上、シンガポールの給与水準に関する備忘録。
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