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シンガポールの労務について(賃金・残業・休暇)

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シンガポールの労務について(賃金・残業・休暇)

シンガポールの雇用・労働事情

シンガポールの労働法制は日本と比較して企業に有利になっており、「無理由解雇が可能」「最低賃金なし」等々、経営側からしてみれば非常に魅力的…という話を見聞きすることがあると思うが、かといって企業が好き勝手にできるというワケではない。
当然シンガポールにも日本の労働基準法にあたる「Employment act」、労働組合法にあたる「Trade Union Act」などがあり、企業はそれらの法制やガイドラインを遵守する必要がある。
最近はMOMも労働者の権利の啓蒙や、企業側への指導にも力を入れており、その活動の一環でこのような動画も公開していたりもする。

WorkRight Campaign – Mother and Son

シンガポールの1年間の祝日数は11日であり、日本の15日よりは少ないが、有給の消化率は9割程度と高く、さらに後述するMCと呼ばれる病気休暇もあるので、実際の年間労働日数は日本よりも少なくなるケースが多い。
日本なら風邪を引くと有給休暇を使って休むことになるが、シンガポールでは体調不良の場合は有給とは別に休暇が付与される。
そんな事情を理解していない人が日本のマインドのまま赴任し、「シンガポール人は休んでばかりいる!」などと騒ぐことになる。
権利は行使するためにあるのだが。

とは言っても、これらの労働法令で保護されるのは、月額基本給与S$2,500以下のホワイトカラーとS$4,500以下のブルーカラーだけで、それ以外は雇用契約に基づいた労働条件となる。
少し前に日本でも話題になったホワイトカラーエグゼンプションが、日本人の感覚からすれば激緩で運用されていると言える。
月給21万円程度の事務職で、残業手当も出ないとなると、そりゃさっさと仕事を終わらせて帰宅するに決まっている。だらだら残業なんてしていられない。
ひょっとするとシンガポール企業の統計上の生産性の高さはこんなところに理由のひとつがあるのかもしれない。
まぁ、駐在としてシンガポールにいる日本人は、就労ビザ取得要件の関係上、これらの労働法令の対象になることはない。
思う存分無給残業に勤しむことができる。残念ながら。

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さて、シンガポールの労働市場において、日系企業は人気がない。
ローカルスタッフの出世が限られている、賃金が高くない…というか安い、その割にハードワークというところが不評のようだ。
筆者もそんな会社は嫌だ。
製造業や建築業などでは現場作業者に比較的賃金の安い外国人を雇用することが多いが、雇える人数は雇用しているシンガポール人の数による。
ところが、最近は日本の本社が「働き方改革」で忙しく、遠い南の島までは監視が行き届いていないのか、「シンガポール人の雇用に積極的ではない」としてMOMのウォッチリストに載ってしまった日系企業もある始末。
これ以上、日系企業の評判が悪くならないことを祈る限りだ。

そんなシンガポールで仕事をする上で、最低限の労務に関する知識は必要かと思う。
そこで労務・労働法制関係のうち、賃金、産業、休暇に関しての基本情報を紹介する。
筆者は労務のプロでも何でもないので、記事の内容は参考程度ということは承知して欲しい。
読者諸氏においてはMOMのサイトからしっかり情報を得て欲しい。
と言うわけでシンガポールの労務に関する備忘録。

労働基準法「Employment act」

シンガポールの労働基準法にあたる「Employment act」は、月額基本給与がS$4,500以下のWorkman(肉体労働者)と呼ばれるブルーカラー、そしてS$2,500以下のnon-PME(PME:Professionals, Managers, Executives)と呼ばれる非専門・非幹部従業員のホワイトカラーが適応対象となる。
これに当てはまらない場合は、個別の雇用契約よって労働条件が決められる。
詳細はこのページで確認して欲しい。
だたさすがに現行の規定は被雇用者に厳しすぎるとの声もあり、MOMが緩和する検討に最近入った。
基準の月額給与の見直しや、PMEに対する不当解雇に関しての保証を付与することを検討しているようだ。
今回の記事では現行の「Employment act」の適応対象となる現場、一般従業員を前提として話を進める。

雇用契約

シンガポールにおいて企業は雇用する従業員との間に雇用契約を結ぶ必要がある。
これはKETs(Key Employment Terms)と呼ばれている書類で、5つのカテゴリ、17の項目で成り立っている。
企業は雇用して14日以内に従業員とこれを結ばないといけない。
内容は「雇用期間」「賃金(基本給、手当、控除、時間外手当等)」「休暇」「医療保障」など多岐にわたる。
詳細はここで確認できる。

労働時間と残業

労働時間は1日8時間、週44時間が上限で、1日12時間以上の勤務はできない。
これを超えて残業をする場合は、月額給与の1.5倍を基準とする時間外手当を支給なければならい。
月72時間を超える残業は不可、ただしKETsで定めた休日(REST DAY)の出勤はこれに含まれない。
詳細はここで確認できる。

時間外労働の計算

フルタイムの場合、下記の式で1時間当たりの残業手当・時間外手当を算出する。

(12ヶ月 × 月額基本給)÷(52週間【1年間】× 44時間【週の労働時間】)× 1.5(割増分)

つまり基本給がS$1,200の場合、
(12 × S$1,200)÷(52×44)× 1.5 = 6.3(1時間当たりの基本給)× 1.5(割増分)=9.5

1時間当たりの基本給はS$6.3で、1.5倍のS$9.50が時間外手当となる。

会社の判断で休日(REST DAY)に従業員を出勤させた場合は、休日割増が2倍となり、半日出勤で1日分、1日出勤で2日分を支給しなければならない。
時間外手当は締め日から14日以内に支払うこと。
これら時間外手当の詳細の確認と試算がここでできるので参照して欲しい。

有給休暇(Annual leave)

年次有給休暇は3ヶ月以上の勤続で権利が生じる、ただし月間又は年間に定められた就業日数の8割以上の勤務が必要。
勤続3ヶ月で7日付与され、以後1年ごとに1日以上有給日数を増やさなければならない。
詳細はここで確認できる。
前述のようにシンガポールでの消化率は9割程度と高く、いつも誰かが会社を休んでいる印象だ。

病気休暇(Medical Leave /Sick Leave )

シンガポールの職場で良く耳にする「MC(エムシー)」のこと。
MCは「Medical Certificate(診断書)」の略。
勤続6ヶ月間以上で、1年に14日の病気休暇(入院を要する場合は60日の病気休暇)を取る権利がある。
体調が悪ければ病院で診断書をもらい、それを会社に提出すれば、有給の病気休暇が取れる。
毎年きっちり14回体調不良になる人もいる。
そう言えば、筆者は取ったことないな。MC。
企業によってはMCを取らないでいると報奨金を出すなどし、乱用を防いでいるケースもある。
詳細はここで確認できる。

各種出産育児休暇

育児休暇(Childcare leave )

GPCL(Government-Paid Childcare Leave )に基づき、勤続3ヶ月で6日間の有給の育児休暇の取得が可能。
子供がシンガポールの市民権を持ち、7歳未満であることが条件。
1日あたりS$500を上限として、最初の3日は企業側が賃金を支給し、残りの3日は政府が支給することになっている。
詳細はここで確認できる。

出産休暇(Maternity leave )

GPML(Government-Paid Maternity Leave)に基づき、職を持つ母親が16週間の有給の出産休暇を取得できる。
勤続3ヶ月以上で、子供がシンガポールの市民権を持っていることが条件。
第一子、第二子の場合、最初の8週間は企業側が賃金を支給し、残りの8週間は政府が支給することになっている。
第三子以降は16週間分全て政府からの支給となる。
詳細はここで確認できる。

夫婦間の出産休暇の共有(Shared parental leave )

前述の出産したGPMLで母親が取得できる16週間の休みのうち、母親の同意の上で最大4週間を父親に譲渡できる。
週あたりS$2,500を上限として有給となる。
詳細はここで確認できる。

父親の育児休暇(Paternity leave )

前述のShared parental leaveとは別に、GPPL(Government-Paid Paternity Leave)に基づき、新たに出生した子供の父親は、勤続3ヶ月で2週間の有給の育児休暇の取得が可能。
出生した子供がシンガポールの市民権を持っていることが条件。
給与は週休S$2,500を上限として、政府から支給される。
原則として出生から16週間以内に連続して2週間取得する。
ただし、会社と対象者間の合意があれば、一定の条件下での取得時期の変更は可能。
詳細はここで確認できる。

従業員の辞職及び解雇

従業員が退職を希望した場合、企業がそれを拒否するのは違法。
企業はガイドラインに従っていれば、従業員との雇用契約の解除(解雇)をすることができる。
従業員に書面で事前通知をすることにより、契約条件に従って解雇することができる。
事前通知なしに解雇する場合は、通知期間分の給与を支払う必要がある。
出産に関わる休暇、労働組合、兵役が理由の解雇は禁止されている。
従業員は企業側の不当な解雇についてMOMの大臣宛に訴え出ることが可能。
詳細はここで確認できる。

最後に

シンガポールの労務においても、企業に対して様々な法律やガイドラインがあることが理解できると思う。
特に少子化問題を抱えるこの国では、出産に関して父親も含めて手厚い保護がされているので、「嫁さんに子供が生まれたからって、なんで旦那が何週間も仕事休んでるんだ!?」などと恥ずかしい戯れ言を口にして、ローカルスタッフから白い目で見られないようにして欲しい。
日本政府が日本文化の輸出に力を入れているからと言って、ブラック企業文化までシンガポールに輸出しないでいただきたいものである。
全うにやっている真面目な日系企業にとっても迷惑千万な話だ。

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