【2019年4月より改正】シンガポールの雇用法

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【2019年4月より改正】シンガポールの雇用法

シンガポールの雇用・労働事情

シンガポールの労働法制は日本と比較して企業に有利になっており、「無理由解雇が可能」「最低賃金なし」等々、経営側からしてみれば非常に魅力的…という話を見聞きすることがあると思うが、かといって企業が好き勝手にできるというワケではない。
当然シンガポールにも日本の労働基準法にあたる「Employment act」、労働組合法にあたる「Trade Union Act」などがあり、企業はそれらの法制やガイドラインを遵守する必要がある。
最近はMOMも労働者の権利の啓蒙や、企業側への指導にも力を入れており、その活動の一環でこのような動画も公開していたりもする。

シンガポールの1年間の祝日数は11日であり、日本の15日よりは少ないが、有給の消化率は9割以上と高く、さらに後述するMCと呼ばれる病気休暇もあるので、実際の年間労働日数は日本よりも少なくなるケースが多い。
日本なら風邪を引くと有給休暇を使って休むことになるが、シンガポールでは体調不良の場合は有給とは別に休暇が付与される。
そんな事情を理解していない人が日本のマインドのまま赴任し、「シンガポール人は休んでばかりいる!」などと騒ぐことになる。
権利は行使するためにあるのだが。

2019年4月からの雇用法改正で保護対象が全従業員に

さて、これまではシンガポールの労働・雇用法令で保護対象となっていたのは非管理職とS$4,500以下の管理職だけで、それ以外は個別の雇用契約に基づいた労働条件で対応することになっていた。
つまり十分に給与を貰っている上級管理職は雇用法の枠外にあり、有給などについては会社との個別契約に基づいたものだった。

それが2019年4月1日からは、全従業員が雇用法の適用対象となり、会社は上級管理職も含めた全従業員に対して「Core Provisions」と呼ばれる主に下記の義務を負うことになる。これらは従業員から見れば権利と言うことになる。

  1. 給与は締め日より7日以内に支払わなければならない
  2. 勤続年数に応じて最低7日から14日の年次有給休暇(Annual leave)の付与
  3. 傷病休暇(Sick Leave)は年間14日、入院を伴う場合は最大60日の付与
  4. 年間11日の公休の付与
  5. 従業員の就業記録(労働時間)の記録を保管、従業員に書面による雇用条件の提示、明細給与明細発行の義務
  6. 不当解雇に対する訴え

各企業は改正雇用法の施行前に、社内規定や従業員との契約を上記に準じて変更する必要がある。
このように上記の雇用法改正は主にこれまで対象外だった月額給与がS$4,500以上の上級管理職が新たに恩恵を受けることになる内容だ。
詳細は下記のMOMのサイトを参照して欲しい。

Amendments to the Employment Act
From 1 April 2019, the Employment Act will be amended to cov...

 

雇用法第4章の適用者拡大

さて、今回の改正の影響は上級管理職のみではない。
シンガポールの雇用法には雇用法第4章(Part IV Provisions)と呼ばれる、主に非管理職のホワイトカラーやブルーカラーの従業員が対象となる従業員保護のための規定があるのだが、その対象が2019年4月1日より拡大される。
雇用法第4章の主な変更点は下記になる。

1.雇用法第4章の適用対象の変更

これまでは月額基本給与がS$4,500以下のWorkman(現場労働者)と呼ばれるブルーカラー、そしてS$2,500以下のnon-PME(PME:Professionals, Managers, Executives)と呼ばれる非専門・非幹部従業員のホワイトカラーが適応対象だったのだが、これがnon-PMEに関しては対象者が月額給与S$2,500からS$2,600に引き上げられる。
また、それに合わせて、残業時間手当の計算に使用する月給上限額を2,250Sドルから2,600Sドルに引き上げる。
これにより10万人が残業手当の増額などの恩恵を受けることになる。

2.傷病休暇取得時の診断書要件緩和

傷病休暇(Sick Leave)取得時に会社に提出が義務づけられている、診断書(MC)の要件を変更し、政府または企業が指定する医師によるものから、法令に基づき登録された医師によるもので可能となった。

3.労働紛争裁判所への訴え

これまで雇用法の対象ではなかった従業員も、今回の改正でECTにより、不当解雇や賃金問題等に関して、ECT(Employment Claims Tribunals)と呼ばれる労働紛争裁判所に訴えることができるようになる。

最後に

シンガポールに暮らしていると、日系企業、特に飲食・サービス業のブラックな労働条件の話を聞くことが多い。
しかも、明らかに雇用法に反していると思われる内容のものが多い。
日系企業は条件面等の問題もあり、決して人気の就職先ではない。
しっかりとシンガポールの法律は遵守し、これ以上日系企業の評判を落とさないで貰いたいものである。

以上、2019年4月1日からのシンガポールの改正雇用法に関する備忘録。

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