自転車シェアリング「oBike」SGから撤退/デポジット49ドルは戻らず

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自転車シェアリング「oBike」SGから撤退 – デポジット49ドルは戻らず

2018年6月25日、自転車シェアリングサービス企業「oBike」が本部を置くシンガポールでのサービスを突如終了した。
多数の同業との激しい競争下でシンガポール当局による規制強化に対応できなかったことが背景にある。
oBikeのサービスを受けるには49シンガポールドル(約4千円)のデポジットを払う必要があったが、サービスの終了及びoBikeのシンガポール事業の精算により事実上回収は不可能となった。

※7月14日よりデポジットの返金プログラムがスタートした。詳細は下記の記事を参照。

自転車シェアリング「oBike」デポジットの返金手続き開始
自転車シェアリング「oBike」デポジットの返金手続き開始 先日、自転車シェアリングサービス「oBike」のシンガポール...

oBikeによる公式アナウンスは下記のとおり。

LTA(陸上交通庁)への恨み辛みがにじみ出る文面だが、ユーザーが一番気にするデポジットへの言及は一切無い。
実はこの告知が出る数日前から、ツイッター上では「アプリからデポジットのためのアイコンが消えた!」などの書き込みがあり、サービス継続やデポジットの返金が不安視されて始めていた。

公式フェイスブックやツイッターにはユーザからのoBikeへの罵詈雑言が溢れかえっている有様だ。

oBike
oBike - 「いいね!」128,044件 - oBike is the First Global station-l...
Real founder of oBike is Shi Yi, a multimillionaire. S'poreans, collect your S refund from him.
He visits Singapore from time to time.

「100万人以上のユーザーということは49ミリオンの持ち逃げじゃねーか!」
「億万長者の創業者から回収しろ!」
など、ユーザーの怒りは半端ない状況だ。

デポジットの49ドルの回収には、oBikeのシンガポール事業の精算手続きに伴って管財人に債務証明などの書類を提出する必要などがあり、一般市民が回収するのは実質上不可能な状況だ。

さて今回の騒動の元々の原因はLTAによる自転車シェアリングサービス規制強化だ。
これまでの経緯を簡単に説明する。
シンガポールにおいてもこの数年で急速に自転車シェアリングサービスが普及し、至る所でレンタル自転車を見かけるようになった。
これらサービスはほぼ野放しの状態で、島中にシェア自転車が溢れ、利便性が増した一方で放置自転車や破損自転車が社会問題となっていた。

そのような中、2018年5月4日に自転車シェアリングサービスは事業許可制に必要になることをLTAが発表した。
これは無差別なシェア自転車放置への対策を目的とした今年3月の法改正に基づくものだ。
7月7日までにライセンスを申請できない業者は、直ちにサービス提供を停止する義務があり、違反した場合は罰金が科せられることとなった。

ライセンスの取得にあたって事業者は、ユーザーが責任をもって確実に駐輪場に自転車を返却するようにしなければいけなくなった。
具体的には、ユーザーは自転車を返却する際に駐輪場に設置されたQRコードをスキャンしなければならず、それが完了するまでは課金が継続するようになる。
また、今後はユーザーの自転車の使用状況は一元管理され、無差別な駐輪を年間3回繰り返したユーザーは全ての自転車シェアリングサービスの利用が一年間禁止されることとなる。

土地が限られるシンガポールにおいて十分な駐輪場の確保は難しく、この規制は結果的に売上に直結する自転車の総量をある程度制限することになる。
また、新しいシステム導入など企業にさらに負担を強いることにもなる。
結果、今回のoBikeのようにそれに耐えられない、もしくは対応できない企業が、順次退場していくこととなった。

今回のoBikeのシンガポール事業撤退に伴い、LTAはシンガポール全島に散らばる全てのoBike自転車を7月4日までに回収するよう指示を出した。
島中で見かけたoBikeロゴをつけた自転車も、これら見かけることは無くなるのだと思う。

今回の騒動はデポジットが戻ってこなくなったユーザーには気の毒な限りだが、筆者としてはこの規制が施行されることは歓迎だ。
やはりあちらこちらに放置されている自転車は見苦しいし、あまりにも故障・破損している自転車が多すぎる。
いざ自転車を利用しようとしても壊れていることが多く、乗る前に自転車に問題がないかあれこれチェックするのは手間だ。
今回の規制は可能な限り企業の収益性とユーザーの利便性を損なわずに、放置自転車を減らすことを目的としたものだと理解できる。

これまで一連の流れを見ていると、シンガポール政府の新興サービスへの対応の典型例だと言える。
自転車に限らず自動車のライドシェア、各種デリバリーサービスなどもそうなのだが、自国を革新的な製品やサービスの実験場としていることがよく理解できる。
最初はあまり規制せず自由にやらせておいて、問題が顕在化してきたら素早く規制を行う。
まさに「規制の砂場」だ。

自転車シェアサービスを例に取れば、確かに放置自転車などの問題が顕在化したが、その一報でその利便性も利用者やシンガポール国民が肌で理解することができた。
そのメリットとデメリットを実際に利用者が体感できることには大きな意味がある。
これにより「反対か賛成か」のような極端な意見や選択肢ではなく、ある程度の社会的な合意ができるバランスの取れた規制が生まれ、結果としてより良いサービスが提供されることとなる。
「とりあえずやってみる」というのも悪くはないのだ。

さて、今回の騒動を受けて他の自転車シェアサービス企業にも動きが出てきた。
「Mobike」「ofo」「Anywheel」「SG Bike」が6月29日に一斉にLTAに事業ライセンス交付の申請を提出した。
審査が順調であれば9月までにLTAから事業者にライセンスが交付されることになる。

https://www.channelnewsasia.com/news/singapore/mobike-ofo-anywheel-and-sg-bike-submit-licence-applications-to-10483660

また、大手の一角である「Mobike」がユーザーのデポジット未返還に対する不安に対応して、デポジットなしのサービス提供を発表した。

https://www.todayonline.com/singapore/mobike-removes-deposit-fee-singaporean-users-following-obikes-abrupt-exit

シンガポール国内でユーザーは既存、新規を問わずデポジットは不要となる。
既存のユーザーも申請をすれば10営業日以内にデポジットの払い戻しを受けることができる。

この南の島では競争原理と規制が絶妙な車の両輪のような絶妙なバランスで回っている。

 

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