【紛争でしたら八田まで】シンガポール、夢と管理は終わらない
「紛争でしたら八田まで」というコミックをご存じだろうか。
八田百合という地政学コンサルタントが、その知性とプロレス技を駆使して、世界各地で発生するトラブルを解決していく…というストーリーのマンガだ。
系譜としては「マスターキートン」や「勇午」に連なり、主人公が世界を股にかけて各地の紛争に携わっていく物語だ。(この2つの作品よりも表現はマイルドだが)
先日「ゴルゴ13」の作者である、さいとう・たかを氏が亡くなったが、そのことに関して記者からコメントを求められた日本を代表するマンガ評論家の麻生太郎氏が、「(ゴルゴ13は)インターナショナルな話題はいっぱいあるが、そういった話題をちゃんと取り続けているのはなかなかのもので、あれだけのものは最近で言えば『紛争でしたら八田まで』が出てきている。(記者に)『紛争でしたら八田まで』読んでいる人は?…1人もいないの?全然マンガを語るレベルが違うなぁ」と相変わらずの麻生節を炸裂させつつ「紛争でしたら八田まで」に言及したことが記憶に新しい。
さて、この話題の「紛争でしたら八田まで」だが、最新刊の7巻ではシンガポールが舞台として登場している。
サブタイトルは「シンガポール、夢と管理は終わらない」だ。
実は主人公の八田百合はシンガポールで幼少期を過ごしており、父親は華人のシンガポーリアン、ということが明かされる話だ。
主人公のもう一つの母国ということもあって、120ページほどの物語の間にシンガポールに関する情報が、市民生活、グルメ、政治、歴史等々、盛りだくさんに語られている。
「ホーカーセンター」「ナシレマ」「HDB」「国費留学生」「PSLE」「アイスカチャン」「バンドン」「1994年のむち打ち刑問題」「初代首相リー・クアンユー」「オンデオンデ」「No Choice」「3C(CAR、Condo、CreditCard)」「マイロ・ダイナソー」「フェイクニュース禁止法」「ゲイランのカエルの唐揚げ」「The Art of Charlie Chan Hock Chye」、シンガポールにまつわる様々なキーワードが登場しながら、百合と友人アイシャを中心に物語が進行する。
「マイロ・ダイナソー」なんてどこで知ったのだろうか作者は…、と思うくらいマニアックなシンガポール情報もあって、シンガポール在住者や経験者が思わずニヤリとしてしまうシーンもある。
大まかなストーリーは以下の通り。
マレー系シンガポーリアンのアイシャは劇団所属の脚本家。彼女が作った脚本が問題となり、当局から上演中止命令が。
そこで幼馴染であり地政学コンサルタントの百合に協力を依頼する事から物語がスタートする。
百合は「チセイ」を武器にどう解決していくのか?
…というあらすじだ。
地理的に戦略上の要衝に位置し、マレーシアとインドネシアという大国に囲まれ、米中の微妙なバワーバランスの中で厳しい舵取りが要求される小国の実情を上手にまとめた話となっている。
読んで損はなしの漫画なので、是非ご一読を。
この作品を紹介したWeb記事も紹介しておく。
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